終活で重要な遺言書とは?種類や書き方、遺書やエンディングノートとの違いを簡単に解説

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遺言書という言葉は、聞いたことがある方も多いと思います。

終活をする上で、遺言書を残そうと考えている方もいることでしょう。

ですが、遺言書と言っても実は種類が多数あったり、決まった書き方がある事を知っている方は意外と少ないものです。

この記事では、終活をする上で重要な遺言書についてまとめました。

▼この記事を読んで理解できること
・遺言書の種類
・遺言書の書き方
・遺言書の作る時期
・遺書やエンディングノートとの違い

終活における遺言書について、わかりやすく説明します。

目次

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遺言書とは

「遺言書(ゆいごんしょ)」とは何か、まず概要をWikipedia(ウィキペディア)で調べてみると項目が作成されていませんでした(2019年2月8日時点)

しかし、「遺言(ゆいごん、いごん、いげん)」という項目がありますので、こちらの項目を確認してみると、

遺言(ゆいごん、いごん、いげん)とは、日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいう。
日常用語としてはゆいごんと読まれることが多い。

このうち民法上の法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされている(民法960条)。
法律用語としてはいごんと読まれることが多い。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

となっています。

簡単に言うと「遺言」とは、故人が自身の死後のために残した言葉や文章のことを言い、法律に定められた方式で残された遺言は法的な効力を持ちます。
法律用語としては「いごん」と読まれることが多いです。

つまり遺言書とは「遺言」を残した書面のことを指すので、故人が自身の死後のために残した法的な書面を「遺言書」と呼びます。
また、遺言書は「遺言状」とも呼ばれます。
基本的には遺言書も遺言状も同じ意味ですので、どちらの呼び方でも違いはありません。
ただし、一般的には「遺言書」の方が多く使われます。

遺言書は英語で何と言う?
「遺言書」の英語表記:will
「遺言書」の法律用語:testament

それでは、遺言書を作成する目的や意味とはどのようなものがあるでしょうか?

遺言書を作成する理由を簡単に説明します。

 

遺言書を作成する理由

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遺言書が、法的な効力を持った個人の言葉を残しておいた書面だということはわかって頂けたかと思います。
それでは、遺言書はどのような時のために作成されるのでしょうか。

遺言書を残す理由は人それぞれでしょうが、主に以下の目的で作成されます。

・遺産相続
・不動産など分割できない遺産の相続
・相続人がいない
・事業の継続
・ペットの世話の依頼

それでは、ひとつずつ説明していきます。

 

遺産相続

遺言書は、一般的には遺産相続のために作成されます。

ご家族の中に特別に援助が必要な家族がいる場合や、財産を相続させたくない相続人がいる場合など相続関係が複雑な場合に遺言書を用意します。
遺言書によりご自身の自由に遺産を分配することで、何かと揉めがちな遺産相続をスムーズに行うことが可能となります。

遺言書が残っていることで、相続人にとっては悩みの種が減るため、無用なトラブルを回避することが出来るでしょう。

ちなみに遺産分配は遺言書がなければ、基本的には民法で定められている「法定相続分」という割合を目安に分配されます。

「法定相続分」の主な分配比率

配偶者と子供配偶者と子供で1:1
配偶者のみ全て配偶者
配偶者と親配偶者が三分の二・親が三分の一
配偶者と兄弟・姉妹配偶者が四分の三・兄弟・姉妹が四分の一
子供のみ全て子供
親のみ全て親
兄弟・姉妹のみ全て兄弟・姉妹

上記の割合はあくまで目安で、遺産分割は必ずしも法定相続分の割合に縛られるわけではありません。
だからこそトラブルも生まれがちで、血の繋がった家族ですら遺産相続が原因で疎遠となってしまう場合があります。
ある程度の遺産を残す場合は、しっかりと遺言書を残しておきましょう。

 

不動産など分割できない遺産の相続

残す遺産が家や土地など、簡単に分割できない資産の場合です。

遺産を平等に分けることが難しくなってしまうので、最悪の場合、裁判に発展するケースもあります。

そのため、土地は誰が引き継ぐのか、土地を引き継がなかった他の人にはそのぶん多めに現金を振り分けるのかなどを事前に決めておき、遺言書に残しておく事でトラブルを避けることができます。

 

相続人がいない

相続人がいない場合、残った財産は国庫に帰属します。

それならば、血の繋がりがなくても恩がある人に財産を譲りたいや、慈善団体に寄付したいと考える方もいるかと思います。

その場合、遺言書でその意思を残しておく必要があります。

 

事業の継続

個人で事業を行っている方などで、その事業を継続させたい場合は遺言書が必要となります。

経営基盤となる店舗や工場などの資産を、後継者に相続する遺言を残します。

また同族経営の会社の場合は、相続により会社の株式などが各相続人の共有になってしまうと、その後の経営に支障が生じてしまう可能性があります。
こういった場合も、分割方法を遺言書で指定する必要があります。

 

ペットの世話の依頼

一人暮らしでペットを飼っている場合、ご自身の死後にペットがどうやって生きていくか、心配になるかと思います。

そういった場合は、信頼できる友人などに『ペットの世話をみてもらう』ことを条件に、遺産を相続させる遺言書を書くことが可能です。

こういった、財産をあげる見返りに、相続者に一定の義務を負担してもらうことを『負担付遺贈』といいます。

 

遺言書の種類

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遺言書は基本的には遺産相続のために作成するということがわかって頂けたかと思います。

ですが、一口に遺言書と言っても実は遺言書には複数の種類があります。
この項目では、遺言書の種類を説明していきます。

まず、遺言書は大きく分けて以下のふたつに分けられます。

・普通方式
・特別方式

基本的に、遺言書とは普通方式の遺言書を指す場合が多いです。

特別方式の遺言書は、相続人の死期が迫っており、普通方式では間に合わない人が遺言を残す場合を想定したものです。
法律に規定はありますが、基本的にあまり利用はされていません。

更に、この普通方式の中で三種類、特別方式の中で二種類に分類されています。

▼普通方式
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

▼特別方式
・緊急時遺言
・隔絶地遺言

正確には特別方式はこの二種類の中から更に分けられたりもしますが、それは後ほど詳しく説明します。

それでは、遺言書の種類をひとつずつ説明していきます。

 

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普通方式

一般的な遺言書である普通方式は、3種類の遺言書があります。

・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

それぞれの特徴を簡単に説明すると、以下の通りになります。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
記入する人本人のみ本人が伝えて公証人が記入特に制限なし
証人の必要性不要二人以上の証人が必要二人以上の証人が必要
検認手続き必要(※1)不要必要
大きな特徴・全て手書きで自分が作成
・使用されることが一番多い遺言書
・作成が簡単で費用が最も安い
・書き方を間違えると無効になる
・公証役場で公証人に書いてもらう遺言書
・最も安全で確実な遺言方法
・無効になる心配がない
・作成に手間や費用がかかる
・遺言書記入後、遺言者と証人が署名・捺印する
・あまり利用されていない方法
・改ざんのリスクなく、遺言内容を秘密にできる
・作成に手間や費用がかかる

(※1)遺言書を法務局で保管してもらうことが可能で、その場合は遺言書の検認が不要となります。

それでは、ひとつずつ詳しい説明やメリット、デメリットを説明していきます。

 

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言をする方が自筆で書いて作成する遺言書です。
遺言書を作成した後どこかに持って行く必要などもなく、最も手軽に作成できます。

自筆証書遺言の作成方法の特徴やメリット、デメリットは以下の通りです。

作成方法の特徴・全て手書きで作る必要がある(パソコン入力などはダメ)
・記入後、押印する必要あり。
・相続手続きの前提として、遺言書の検認が必要。
・決まった作成方法がある。
メリット・簡単に作成できる。
・遺言書を作成した事や、遺言内容を他の方に秘密にできる。
・費用が一番かからない方法。
・いつでも、どこでも作成が可能。
デメリット・作成方法を間違えると、遺言書が無効となってしまう。
・改ざんされるリスク、紛失のリスクがある
・自身で手書きが出来なければ作成できない。
・検認作業が必要。
遺言書作成の費用・作成は無料で可能。(紙とペン代程度)
・『検認』時に費用が発生、6000円前後。

自筆証書遺言を簡単に言うと、全て自分で作成する遺言書となります。

遺言書の作成には、遺言の全文や氏名をすべて手書きで作成して、押印する必要があります。
パソコンなどで文字入力すると、遺言書としての効力を失ってしまいます。
ただし、法改正で自筆証書遺言の方式緩和があり、2019年1月13日より財産目録だけはワープロで作成したものでも問題なくなりました。
財産目録とは、自身の財産を明確にするために、分かりやすく書き並べた文書のことを指します。
詳しくはこちらの記事で説明しているので、気になる方はご確認下さい。

 

自筆証書遺言は、紙とペンさえあればどこでも作成できるので、費用もかからず手軽な遺言方法といえるでしょう。
特別な手続きも必要としないことから、遺言方法としては最も利用されています。

デメリットとしては、遺言書を発見した遺族は『検認』を受ける必要があります。
検認とは、発見した遺言書を家庭裁判所に申立てをして、遺言の存在や内容を確認してもらい、正しく効力を発揮できる物なのか判断して貰うことを言います。
残された遺族からすると、多少手間がかかってしまう遺言書とも言えます。

『検認』次第では、遺言書としての効力が無効となる可能性もあるので、多少のリスクがある遺言方法とも言えます。
詳しい自筆証書遺言の書き方などは、『遺言書の書き方』の項目で説明します。

また、リスク面で言うと自筆証書遺言は基本的に家に保管しておくので、ご自身の死後に改ざんされてしまうリスクや、紛失してしまうリスクもあります。

遺言書作成にかかる費用ですが、基本的に費用は紙とペン代程度で特別な費用は必要ありません。
ただし、遺族が『検認』をする場合に印紙代などの必要が発生します。
検認に関する費用の一例は下記の通りです。

収入印紙(家庭裁判所への申立手数料)800円
予納郵券(家庭裁判所への申立手数料)
例:法定相続人3人、東京家庭裁判所の場合
82円切手が9枚 (※1)
738円
必要な添付書類(遺言者、相続人の戸籍謄本等)
例:配偶者と既婚の子供が2人の場合
戸籍謄本が3通 改製原戸籍が3通 
3,600円
遺言検認済証明書150円
合計5,288円

(※1)裁判所や、相続人の人数によって必要数は変わります。

 

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言をする方が内容を話して、公証人が記入して作成する遺言書です。
専門家の元で作成する遺言書なので、最も確実性が高い形式となります。

公正証書遺言の作成方法の特徴やメリット、デメリットは以下の通りです。

作成方法の特徴・遺言の内容を考えて、公証人に伝えて遺言書を一緒に作成して貰う。
・作成には公証人と、証人が2名必要。
・作成した遺言書は公証役場で保管される。
メリット・文字が書けない状態でも遺言書を残せる。
・専門家と作るので、効力が無効になる心配がない。
・改ざん、紛失のリスクがない
・検認のが必要ない
デメリット・手続きが面倒
・費用がかかる
・2名以上の証人が必要
・証人や公証人に遺言書の内容を知られてしまう。
遺言書作成の費用・公証人に支払う手数料が必要。相続財産の金額や、相続人の人数により変動。
・必要書類などの発行手数料。詳しくは下記に記載。

公正証書遺言は、2人の証人が立ち会い、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成する遺言方法です。
作成した遺言書は公証人役場で保管されます。

公正証書遺言を簡単に言うと、専門家と一緒に、相続人に確認を取りながら作成する遺言書です。
その為、最も確実性が高い形式と言えるでしょう。

遺言書を作成する為に必要な書類なども多く、公証役場に連絡して作成するなど、手順が面倒で作成に時間がかかります。

更に公正証書遺言の作成には証人が必要で、手軽に作成はできません。
また、証人や公証人の方に遺言書の内容を知られてしまうので、秘密裏に遺言書を作成することが不可能となります。
詳しい公正証書遺言の書き方、作成の手順などは、『遺言書の書き方』の項目で説明します。

自筆証書遺言の場合は、決まった作成方法通りに遺言書を作らないと遺言書としての効力を失ってしまいます。
その点、公正証書遺言は公証人が執筆をするので、効力が無効になる心配がありません。
また、作成した遺言書は公証役場で保管されるので、偽造や紛失の心配もありません。

自筆証書遺言の場合は、遺言書の死後に『検認』が必要となりますが、公正証書遺言はその必要がありません。
そのため、残された遺族からすると手間が少ない遺言書とも言えます。

遺言書作成の費用に関しては、公証人に支払う手数料が発生します。
公証人への手数料は相続財産の金額や、相続人の人数により変動します。
手数料は下記の通りです。

相続する財産の価値・金額手数料の金額
~100万円5,000円
100万円~200万円7,000円
200万円~500万円11,000円
500万円~1000万円17,000円
1000万円~3000万円23,000円
3000万円~5000万円29,000円
5000万円~1億円43,000円
1億円~3億円43,000円
+
超過額5,000万円ごとに13,000円を加算
3億円~10億円95,000円
+
超過額5,000万円ごとに11,000円を加算
10億円~249,000円
+
超過額5,000万円ごとに8,000円を加算

上記の金額とは別途、相続財産が1億円以下の場合は11,000円が加算されます。

また、公証人への手数料の他に、以下の費用がかかります。

公正証書遺言の謄本の発行手数料250円(1枚)
公証人による自宅や病院などへの出張
(自身が公証役場へ行けない場合に発生)
10000円~20000円
病床執務手数料
(自身が寝たきりの状態で作成する時に発生)
手数料に50%加算
証人を紹介してもらった場合の日当
(自身の友人等に証人を頼めない場合)
5000円~15000円
(一人につき)

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書を書いて封をした後に、その遺言書の存在を公証人が証明してくれる遺言書です。
遺言書の存在を公証役場で証明してもらい、なおかつ内容を秘密にすることが可能です。

秘密証書遺言の作成方法の特徴やメリット、デメリットは以下の通りです。

作成方法の特徴・遺言書の記入は、手書きでもパソコン入力でも代筆でも良い
・署名は自筆でする必要あり。
・作成には公証人と、証人が2名必要。
・2人の証人と一緒に公証役場に遺言書を提出する
メリット・遺言書の内容を秘密にできる
・改ざんや偽造を避けられる
・パソコンや代筆でも作成できる
デメリット・作成方法を間違えると、遺言書が無効となってしまう。
・署名が出来ない場合は作成できない。
・手間や費用がかかる
・2名以上の証人が必要
・検認作業が必要
遺言書作成の費用・公証人に支払う手数料が必要、11,000円。
・『検認』時に費用が発生、6000円前後。

秘密証書遺言は、公証人と証人に遺言書の存在を証明してもらいながら、遺言書を残す方法です。
証人や相続人含めて、内容を本人以外は確認することができないので、遺言の内容自体は秘密にすることができます。

デメリットの割にはメリットが少なく、利用者が一番少ない遺言方法です。

まず、秘密証書遺言は公証人が遺言の内容を確認しないため、内容を秘密にできるというメリットがあります。

更に秘密証書遺言は自筆証書遺言とは違い、遺言全文を自筆で書く必要がありません。
パソコンで文字を入力したり、他人に代筆してもらうことが可能ですので、自筆が難しいお年寄りの方などには喜ばしいでしょう。
ただし、遺言書の署名は自筆する必要があり、押印も必要ですので注意が必要です。

また、秘密証書遺言は遺言書を書いた後に封をするので、改ざんや偽造は避けられるでしょう。
ただし、保管は遺言者本人が行うので、紛失には気をつける必要性があります。

デメリットとしては、遺言書を作成する為に必要な書類なども多く、公証役場に連絡して作成するなど、手順が面倒で作成に時間がかかります。
また作成には証人が二人以上必要です。

記載内容に不備があると無効になる可能性もあるなど、確実性にもやや欠けてしまっています。

また、遺言書を発見した遺族は『検認』を受ける必要があります。

遺言書作成の費用に関しては、公証人に支払う手数料が発生します。
ただし、公正証書遺言とは違い相続対象財産の価額は秘密とされていますので、手数料は「遺言加算」の11,000円のみとなります。

また、自筆証書遺言と同様に、遺族が『検認』をする場合に印紙代などの必要が発生します。
検認に関する費用の一例は下記の通りです。

収入印紙(家庭裁判所への申立手数料)800円
予納郵券(家庭裁判所への申立手数料)
例:法定相続人3人、東京家庭裁判所の場合
82円切手が9枚 (※1)
738円
必要な添付書類(遺言者、相続人の戸籍謄本等)
例:配偶者と既婚の子供が2人の場合
戸籍謄本が3通 改製原戸籍が3通 
3,600円
遺言検認済証明書150円
合計5,288円

(※1)裁判所や、相続人の人数によって必要数は変わります。

 

普通方式の遺言書に関して紹介しました。

それでは続いて、特別方式の遺言書に関して説明します。

 

特別方式

特別方式の遺言書は、事故や病気など特定の原因で自身の身に命の危険が迫っている状況で残す緊急時の遺言の形式です。

特別な方式の遺言ですので、遺言書作成から遺言者が六ヶ月後も生存している場合、遺言書の内容は無効となります。

基本的に、普通方式の遺言ができない方が緊急時で遺言する場合の方式です。

特別方式の遺言書にはまず、大きく分けて二つの種類に分けられます。

・緊急時遺言
・隔絶地遺言(遠隔地遺言と呼ぶ場合もあります)

そして、上記の二つの種類の中から状況に応じて更に二つの種類に分類され、計四つの種類の遺言書があります。

・一般緊急時遺言(危急時遺言)
・難船緊急時遺言(危急時遺言)
・一般隔絶地遺言(隔絶地遺言)
・船舶隔絶地遺言(隔絶地遺言)

それぞれの特徴を簡単に説明すると、以下の通りになります。

一般緊急時遺言難船緊急時遺言一般隔絶地遺言船舶隔絶地遺言
遺言状況・病気で死が迫っている時
・怪我で死が迫っている時
・船の遭難等で死が迫っている時
・飛行機の難航等で死が迫っている時
・伝染病等で隔離されている時
・刑務所に服役中
・船舶中で遺言書を作成したい時
必要証人・三人以上の証人が必要・二人以上の証人が必要・一人以上の証人が必要
・警察官が一人必要
・二人以上の証人が必要
・乗務員一人が必要
遺言方法・口頭で遺言内容を説明
・証人がを文章に書き起こす
・口頭で遺言内容を説明
・証人がを文章に書き起こす
・遺言者本人が遺言書を作成
・代筆は不可
・証人と警察官の署名、押印が必要
・遺言者本人が遺言書を作成
・代筆は不可
・証人と乗務員の署名、押印が必要

それでは、ひとつずつ簡単に説明していきます。

 

一般緊急時遺言(危急時遺言)

一般緊急時遺言とは、病気や怪我などで目の前に生命の危機が迫っているような状態で作成する遺言書のことを言います。
一般臨終遺言と呼ばれる場合もあります。

3人以上の証人のもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、内容を文章に書き起こすことで遺言書としての効力が発生します。
証人となる人は利害関係者以外となりますので、相続人は証人にはなれません。

一般緊急時遺言の場合、遺言書の作成日から20日以内に、遺言者の住所地の家庭裁判所で確認手続きをする必要があります。
確認の手続きをしないと遺言書としての効力が消えてしまうので、注意しましょう。

 

難船緊急時遺言(危急時遺言)

難船緊急時遺言とは、船や飛行機などを利用している状態で、命の危険が迫っている時に作成する遺言書のことを言います。
難船臨終遺言と呼ばれる場合もあります。

2人以上の証人のもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、内容を文章に書き起こすことで遺言書としての効力が発生します。

一般危急時遺言と同様に、遺言の効力について家庭裁判所に確認請求をしてもらう必要があります。
難船緊急時遺言の場合は日数の制限はありませんが、なるべく速やかに確認請求を受ける必要があります。

 

一般隔絶地遺言(隔絶地遺言)

一般隔絶地遺言とは、伝染病などで隔離状態の方や、刑務所に服役中の方が作成する遺言書のことを言います。
また、災害などで被災されてしまった方が作成することも可能です。

証人1人以上と、警察官が1人以上の立会いのもと、遺言者本人が遺言書を作成することで遺言書としての効力が発生します。

危急時遺言のように他者の代筆は認められておらず、警察官と証人の署名と押印が必要です。

本人が作成しているので、家庭裁判所での確認は不要となります。

 

船舶隔絶地遺言(隔絶地遺言)

船舶隔絶地遺言とは、航海中などで長時間、陸地から離れている状態の方が作成する遺言書のことを言います。
飛行機は搭乗時間が短いので、船舶隔絶地遺言の条件には該当しません。
生命の危機が直ぐには迫っていない状況で、船の中で遺言書を作成したい時に利用する方法となります。

証人2人以上と、船長もしくは事務員が1人以上の立会いのもと、遺言者本人が遺言書を作成することで遺言書としての効力が発生します。

危急時遺言のように他者の代筆は認められておらず、船長もしくは事務員と証人による署名と押印が必要です。

本人が作成しているので、家庭裁判所での確認は不要となります

 

特別方式の遺言に関して説明しました。
終活とは少し違う内容だったかと思いますが、こういった種類の遺言書もあるということを知って頂ければと思います。

 

遺言書の種類についてのまとめ

普通方式の遺言書と特別方式の遺言書、その全てを説明させて頂きました。

基本的には、普通方式の三種類の形式から選択して遺言書を残すことになると思います。

なるべく費用をかけず、簡単に作りたい場合は自筆証書遺言がおすすめです。
費用が掛かってもよいから、遺言書の効力を確実に残したいという場合は公正証書遺言を選ぶと良いかと思います。

ご自身の目的に合わせて、必要な遺言書を選択しましょう。

 

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遺言書の書き方

遺言書の種類にどういったものがあるかは理解して頂けたかと思います。

それでは、実際に遺言書を作成する時の書き方や注意点はどういったものがあるでしょうか。

この項目では、遺言書の作成方法や書き方について説明します。

 

自筆証書遺言の書き方

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自筆証書遺言は、全て自分で手書きで作成する遺言書です。

書き方に決まった形式はありませんが、法律に定められたルールが何個かあり、それを守らないと遺言書として効力を持たなくなってしまいます。
そのため、作成自体は難しくはありませんが注意が必要です。

それではまず、自筆証書遺言をする場合の最低限守るべきルールは以下の通りです。

・全てを手書きで、自筆で作成する
・記載内容は曖昧な表現を使わず具体的に書く

・日付をしっかりと記載する
・署名をして押印する
・書き間違えた場合の修正は決められた方法で

ひとつずつ補足していきます。

 

全てを手書きで、自筆で作成する

遺言書の記入は全て手書きで行ってください。

パソコンなどで文字入力をしてしまったり、音声やビデオなどのデータでの遺言は法的に全て無効になってしまいます。

面倒ですが、しっかり全てを手書きしましょう。

 

記載内容は曖昧な表現を使わず具体的に書く

遺言書に記載する内容は、曖昧な表現は避けて誰が見てもわかるように記載しましょう。

遺言書を記載する時、誰にいくら渡すかなどの金額面や、不動産などの場合に曖昧な表現で書かれることが多く、法的効力が無効となってしまうケースがあります。
例えば、『新宿の自宅を長男の〇〇に譲る』といった記載では説明が不十分で、法務局で受付されず遺族の方が移転登記ができなくなってしまいます。

土地や不動産を相続する場合は「登記簿謄本」の通りに記載して、譲る資産を誰が見てもわかるように記載しましょう。
同様に、預貯金の場合も誰が見てもわかるように「支店名や口座番号」をしっかり明記する必要があります。

 

日付をしっかりと記載する

作成日をしっかりと記載しましょう。

2019年吉日といった書き方をする方もいますが、記入日が特定できないと遺言書は無効となります。

日付も当然ながら全て手書きで、日付の入ったスタンプなども無効となってしまいます。

 

署名をして押印する

ご自身の名前を忘れずに記入して、押印をしましょう。

名前は法的にはペンネームなどでも認められるそうですが、基本的には戸籍どおりのフルネームを記入しましょう。

押印は認め印でも問題ないそうですが、出来れば実印が理想的です。

 

書き間違えた場合の修正は決められた方法で

書き間違えを訂正するには、法律で決められた方法があります。

訂正したい場合は、訂正箇所に二重線を引いて、訂正印を押し、近くに書き加えることで訂正できます。

上記の通りに訂正をしない場合は、効力が無効となってしまうので注意しましょう。

訂正が重なると、全体的にごちゃごちゃとした印象を与えてしまいますので、訂正や追加がある場合は、いっそ全て書き直したほうがよいかと思います。

 

自筆証書遺言を書く時の注意点

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自筆証書遺言を書く時の最低限のルールは理解して頂けたかと思います。

ですが、自筆証書遺言を書く時には法律面以外にも気をつけなくてはいけない点があります。

自筆証書遺言書を書く時の注意点として、以下のことを気をつけましょう。

・封筒に入れて、封をして保管
・遺留分に配慮して遺産分配する
・遺言執行者を決めて指定しておく

それでは、ひとつずつ説明していきます。

 

封筒に入れて、封をして保管

法律で決められているわけではないですが、書いた遺言書は封筒などに入れて、封をして保存しておきましょう。

そうすることで、改ざんのリスクを避けることができます。

また、遺言書は発見してもらわないと意味がないので、確実に遺族が発見できるような場所や、貸金庫などの安全な場所に保管をしたほうが良いでしょう。

 

遺留分に配慮して遺産分配する

▼遺留分とは?

遺留分(いりゅうぶん)とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産の割合をいう。 被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には相続開始とともに相続財産の一定割合を取得しうるという権利(遺留分権)が認められる(1028条)。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

遺留分とは簡単に言うと、法律で決まっている「最低でもこのくらいは法定相続人に対して渡してあげましょう」という割合のことです。

この遺留分を侵害する遺言も法律上では有効ですが、遺留分を侵害された相続人は遺留分減殺請求することができます。
遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された相続人が遺留分を侵害している相続人に対して、侵害額を請求することを言います。

つまり、遺言によって遺留分を侵害してしまうと、遺言者の死後に相続人の間で揉め事が起きてしまう可能性があります。

そのため、基本的には遺留分を侵害する内容の遺言は残さないようにしたほうが良いでしょう。

 

遺言執行者を決めて指定しておく

相続する財産の中に、不動産がある場合は遺言者が死亡した後に、不動産名義を遺言者から相続人に変更する必要があります。

この場合、不動産を相続させたい方が一人であっても、名義変更の手続き時に、相続人全員の協力が必要となります。

このような実際の相続の場面における相続人の大変さを回避する方法として、遺言の中で遺言執行者を選任するという方法があります。

遺言執行者は、相続が開始した後に遺言書の内容に従って相続させるため、必要な手続きを単独で行う権限を得ることになります。
そのため、他の相続人の協力が得られないといった事態になったとしても、手続きを行うことができるというメリットがあります。

遺言執行者は、相続人のうちの一人を選任して問題ありません。

ただ、不動産の名義変更などは専門的な知識が必要となるので、遺言執行者は弁護士や司法書士に依頼する場合も多いです。

遺言執行者は、遺言執行人とも呼ばれます。

 

自筆証書遺言のサンプル・テンプレート

自筆証書遺言を書く時のルールや注意点はわかって頂けたかと思います。

この項目では、実際に自筆証書遺言を書いたサンプルをご紹介します。

雛形やテンプレートにして頂ければ幸いです。

▼自筆証書遺言サンプル

遺言書

遺言者 終活太郎は次の通りに遺言します。

第一条
私は妻の 終活幸子(昭和〇〇年〇月〇日生)に以下の不動産を相続させる。
1.土地
所在 東京都新宿区〇〇
地番 〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇平方メートル

2.建物(自宅)
所在 東京都新宿区新宿〇〇
家屋番号 〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階 〇〇平方メートル 2階 〇〇平方メートル

第二条
私は長男の 終活一郎(昭和〇〇年〇月〇日生)に以下の預金を相続させる。
〇〇銀行〇〇支店の遺言書名義の普通預金
口座番号 01231231230

第三条
私は長女の 終活優子(昭和〇〇年〇月〇日生)に以下の預金を相続させる。
〇〇銀行〇〇支店の遺言書名義の定期預金
口座番号 5555555

第四条
その他の遺言者の全ての財産は、妻である終活幸子に相続させる。

第五条
遺言執行者として、妻である終活幸子を指定する。
・遺言執行者は、遺言者名義の口座名義、払い戻しや解約、その他本遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。
(遺言執行者を弁護士などに頼む場合は、弁護士事務所の住所と担当者の氏名、生年月日を記載)

 

平成〇〇年〇月〇日
東京都新宿区新宿〇丁目〇〇番〇号
遺言者 終活太郎 印

 

公正証書遺言の書き方

6

公正証書遺言は、公証人が記入して作成する遺言書です。
そのため、実際に遺言書を記入するのが遺言者本人ではないので、特に書き方に気をつける必要はありません。

ですが、公正証書遺言は遺言書を作成するまでの手順がやや複雑です。

以下では、公正証書遺言を作成するに必要なものや、作成する手順を説明します。

 

公正証書遺言を作成する為に必要なもの

まず、公正証書遺言を作成するにあたって以下の物が必要となります。

・遺言者の実印
・遺言者の印鑑証明書
・遺言者と相続人の続柄を証明する為の戸籍謄本
・証人となる人の住民票と認印
・預金通帳のコピー
・登記簿謄本および固定資産税評価証明書など(相続資産が不動産の場合)

公正証書遺言を作成する場合には、上記の物をまず用意しておきましょう。

また公証役場によっては、必要となる書類などが違う場合もあります。
あらかじめ、公正証書遺言を作成する予定の公証役場に必要物を確認しておくと良いでしょう。

 

公正証書遺言を作成する手順

公正証書遺言を作成する場合の手順は、以下の流れとなります。

・遺言内容を考えて原案を作成(メモ程度で良いです)
・公証人と事前の打ち合わせ
・2人の証人が立会いのもと、公証役場で証書を作成する
・公正証書遺言の正本が遺言者に渡される

それでは、ひとつずつ説明していきます。

 

遺言内容を考えて原案を作成

まずは誰に何をどのくらい相続するのかを考えて、原案を作成しましょう。

この原案は自分が把握して、後に公証人に説明する為のものです。
そのため、形式などに決まりはなく、メモ程度のものでも充分です。

 

公証人と事前の打ち合わせ

原案をができたら、内容を公証人と打ち合わせをして案文(遺言書の下書きのようなもの)を作成していきます。
遺言の細かな文言を詰めていき、 法的効力がしっかりある遺言書に仕上げて行きます。

公正証書遺言は、一般的に遺言者の住まいから一番最寄りの公証役場で作成します。
遺言者本人が公証役場に行けない場合は、自宅や病院など、遺言者の元に公証人に来てもらって作成することも可能です。
ただし、公証人に出張して貰う場合は、別途で日当や交通費等が必要となります。

案文が出来上がったら、実際に作成する日時を調整して、公証役場に支払う手数料を確認しましょう。
公証役場に支払う手数料は、遺言の目的となる財産の価額とその分け方によって計算されますが、平均で5万円~15万円ほどです。

また遺言者が外出できない、時間が取れない等で公証役場に相談に行けない場合、弁護士などの法律専門家に案文作成や公証人との事前調整を依頼することも可能です。
その場合は専門家に別途費用を支払う必要性が出てきます。

 

2人の証人が立会いのもと、公証役場で証書を作成する

案文が完成したら、後は日程を決めて公証役場で正式な遺言書を作成します。
作成の当日は、遺言者と証人2名が公証役場に行く必要があります。

遺言書の作成時は、本人と証人2名の前で公証人が遺言の内容を読み上げます。
内容に問題がなければ、本人と証人2名が証書に署名をして、押印します。
なお、体調の問題などでペンが握れない、本人がどうしても署名できない場合は公証人による代筆も可能です。

証人に関しては、以下の方は証人になれないので注意してください。

・未成年者の方
・受遺者及び、その配偶者と直系家族の方
・遺言書の作成を担当する公証人の配偶者と、4親等内の親族の方
・公証役場の関係者の方

 

公正証書遺言の正本が遺言者に渡される

公正証書遺言の原本は公証役場が保管して、正本と謄本が本人に手渡されます。
自筆証書遺言とは違い、遺言書を役所が保管してくれているので、紛失や盗難の心配がありません。

最後に、公証人への手数料を公証役場に支払います。
支払いは現金でのみ可能ですので、あらかじめ用意しておきましょう。

以上で、公正証書遺言の作成手順は終了です。

 

秘密証書遺言の書き方

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秘密証書遺言は、遺言書を書いて封をした後に、その遺言書の存在を公証人が証明するものです。

遺言書を自分で作成した後に、公証人に証明して貰うため、手順的には一番手間がかかる方法と言えます。
そのため、秘密証書遺言は普通遺言の中では滅多に利用されない方法です。

この項目では、秘密証書遺言を作成する手順と書き方を説明します。

 

秘密証書遺言を作成する手順

秘密証書遺言を作成する手順は、以下の流れとなります。

・遺言内容を記載する
・遺言書を封筒に入れて封をして押印
・2人の証人と共に遺言書を公証役場に持参する
・遺言者と証人が署名、押印する

このような流れで作成する形となります。

ひとつずつ、説明していきます。

 

遺言内容を記載する

秘密証書遺言は、自分で遺言書を書いて作成する必要があります。

基本的なルールや記載する内容は自筆証書遺言と同様で問題ありません。
自筆証書遺言との大きな違いは、遺言者の自筆の署名と押印がされていれば、他の内容はパソコンでの文字入力や代筆で記載してもよいという点です。
押印の際の印鑑は、認印の使用が可能です。

秘密証書遺言は公証人に存在を証明してもらいますが、遺言内容まで確認することはありません。
そのため、遺言書の形式が違っていたり必要な情報が書かれていなかったりすると、遺言書が無効となってしまう場合があるので注意しましょう。

 

遺言書を封筒に入れて封をして押印

遺言書の作成が完了しましたら、用紙を封筒に入れて封をしましょう。

その後、遺言書に利用した印鑑と同じもので、封に押印してください。

もしも、この印鑑が遺言書に押印したものと異った場合、遺言が無効となってしまうので注意しましょう。

 

2人の証人と共に遺言書を公証役場に持参する

2人の証人と一緒に、作成した遺言書を公証役場へ持っていきます。

公証人と証人2人の前で遺言書を提示し、自分の遺言書であることを証明するために氏名と住所を伝える必要があります。

証人に関しては、以下の方は証人になれないので注意してください。

・未婚の未成年者の方
・受遺者及び、その配偶者と直系家族の方
・遺言書の作成を担当する公証人の配偶者と、4親等内の親族の方
・公証役場の関係者の方

 

遺言者と証人が署名、押印する

公証人が遺言書を提出した日付と、遺言者の氏名と住所を封紙に記入します。

その封紙に遺言者と2人の証人が署名と押印をして、秘密証書遺言が完成となります。

完成した秘密証書遺言は、遺言者自身で保管します。

公証役場には遺言書を作成したという記録だけが残ります。

 

秘密証書遺言の記載内容

秘密証書遺言を作成する手順はわかって頂けたかと思います。

それでは、秘密証書遺言を実際に書く時の内容はどのようなものを書けば良いのでしょうか。

基本的には、秘密証書遺言のルールは自筆証書遺言と同様のものになります。
そのため、記載時のルールや書き方、テンプレートなどは自筆証書遺言の書き方の項目を参考にして下さい。

自筆証書遺言との大きな違いは全て手書きでなくても良い点です。
ただし、署名だけは自筆でないと法的効力を失ってしまうので、注意してください。

 

特別方式の遺言書の書き方

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特別方式遺言は、いずれも普通方式遺言ができない特殊な状況においてのみ認められる略式方式です。

遺言書の種類の項目で書いた通り、証人が必要だったり最低限のルールはありますが、決まった書き方といったものはありません。

そのため、この項目では特別方式の遺言書の文例をご紹介します。

 

一般緊急時遺言

一般緊急時遺言は3人以上の証人のもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、内容を文章に書き起こす遺言書です。

そのため、実際に記載するのは遺言者以外の方になります。

下記の文例は、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、他者が内容を文章に書き起こした一例となります。

 

▼一般緊急時遺言 文例サンプル

遺言書

・遺言者 東京都新宿区新宿 ○丁目○番○号 終活太郎は、病気療養中の所、死亡の危険が迫ったので、平成○○年○月○日午後○時○分、自宅にて、後記証人3名立会いのうえで、証人の1人 遺言卓也に対し、次の通り遺言の趣旨を口授した。

第一条
長男である終活一郎、二男である終活次郎には、それぞれ現金300万円を相続させる。

第二条
妻である終活幸子には、以下の土地建物、及び現金1,000万円を相続させる。
1.土地
所在 東京都新宿区〇〇
地番 〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇平方メートル

2.建物(自宅)
所在 東京都新宿区新宿〇〇
家屋番号 〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階 〇〇平方メートル 2階 〇〇平方メートル

第三条
長男である終活一郎には、遺言者の経営する〇〇店の後継者として、事業経営に必要な新宿区新宿 ○丁目○番地所在の店舗及び同店舗内に付設している機械器具すべてを相続させる。

第四条
この遺言の遺言執行者として、妻である終活幸子を指定する。

証人 遺言卓也は、前記遺言を筆記して遺言者及び他の証人に読み聞かせ、各証人はその筆記の正確なことを承認して、次に署名押印した。

平成○○年○月○日

渋谷区渋谷 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

世田谷区市池尻 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

新宿区新宿 〇丁目〇番〇〇号
証人   (署名)    印

↑各証人が自署することが必要です。

平成〇〇年〇月〇日
東京都新宿区新宿〇丁目〇〇番〇号
遺言者 終活太郎 印

 

難船緊急時遺言

難船緊急時遺言は、2人以上の証人のもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、内容を文章に書き起こす遺言書です。

そのため、こちらも実際に記載するのは遺言者以外の方になります。

下記の文例は、遺言者が口頭で遺言内容を説明して、他者が内容を文章に書き起こした一例となります。

 

▼難船緊急時遺言 文例サンプル

遺言書

・遺言者 東京都新宿区新宿 ○丁目○番○号 終活太郎は、〇〇海運株式会社所有の〇〇丸で太平洋を航海中に、台風のため遭難し死亡が危急に迫ったので、平成〇〇年〇月〇日午後〇時〇〇分同船内で、後記証人2名の立会いをもって、口頭で次の通り遺言した。

第一条
妻である終活幸子に ○○○○○○○○○○○○ を相続させる。

第二条
長男である終活一郎に、遺言者所有の ○○○○○○○○○○○○ を相続させる。

証人は、この遺言を同日船内において筆記し署名押印する。

平成○○年○月○日

渋谷区渋谷 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

世田谷区市池尻 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

平成〇〇年〇月〇日
東京都新宿区新宿〇丁目〇〇番〇号
遺言者 終活太郎 印

 

一般隔絶地遺言

一般隔絶地遺言は、証人1人以上と、警察官が1人以上の立会いのもと、遺言者本人が遺言書を作成する遺言書です。

下記の文例は、遺言者本人が記入した一般隔絶地遺言の一例となります。

 

▼一般隔絶地遺言 文例サンプル

遺言書

遺言者である終活太郎は、伝染病のための行政処分により、交通を遮断された〇〇病院内にいるので、平成○年○月○日、後記警察官及び証人の立会いのもと、以下の通り遺言する。

第一条
遺言者が所有する全財産(但し、次項の1,000万円を除く。)を妻である終活幸子に相続させる。

第二条
遺言者が所有する1,000万円を長男である終活一郎に相続させる。

平成○○年○月○日

新宿区新宿 ○丁目○○番○○号
遺言者    (署名)   印

○○警察署
警部補    (署名)   印
新宿区新宿 ○丁目○○番○○号

なお、証人である遺言卓也は印鑑を所持していなかったので、拇印をもってこれに代えた。

証人   (署名)   拇印

平成〇〇年〇月〇日
東京都新宿区新宿〇丁目〇〇番〇号
遺言者 終活太郎 印

 

船舶隔絶地遺言

船舶隔絶地遺言は、証人2人以上と、船長もしくは事務員が1人以上の立会いのもと、遺言者本人が遺言書を作成する遺言書です。

下記の文例は、遺言者本人が記入した船舶隔絶地遺言の一例となります。

 

▼船舶隔絶地遺言 文例サンプル

遺言書

・遺言者 東京都新宿区新宿 ○丁目○番○号 終活太郎は、〇〇海運株式会社所有の〇〇丸で太平洋を航海中であるため、後記する船長及び証人2人の立会いをもって、次の通り遺言をする。

第一条
遺言者の所有する土地、建物は、すべて長男である終活一郎に相続させる。

第二条
遺言者の所有する現金、預貯金は、すべて妻である終活幸子に相続させる。

第三条
遺言者の所有する上記の2項以外の財産は、次男である終活次郎に相続させる。

平成○○年○月○日

渋谷区渋谷 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

世田谷区市池尻 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

新宿区新宿 ○丁目○○番○○号
証人   (署名)    印

平成〇〇年〇月〇日
東京都新宿区新宿〇丁目〇〇番〇号
遺言者 終活太郎 印

 

遺言書キット

自筆証書遺言に限りますが、遺言書を作成する時には遺言書キットを使うという手もあります。

遺言書キットとは、遺言書を簡単に作成するために必要とされるものがセットで入っているものをいいます。
遺言書キットの中身としては、

・遺言書の書き方の説明
・遺言書用紙
・下書き用紙
・保管用の台紙
・封印できる封筒

などがまとめて入っている場合が多いです。

以下は一例ですが、人気がある、おすすめの遺言書キットをご紹介します。

 

コクヨ 便箋 遺言書キット 遺言書虎の巻ブック付き
1【価格】
定価:1154円
【セット内容】
・遺言書虎の巻
・遺言書用紙(4枚)
・遺言書下書き用紙(2枚)
・封印用封筒(1枚)
・保管用台紙(1枚)
Amazon(アマゾン)へ

 

誰でも簡単につくれる遺言書キット
2【価格】
定価:1944円
【セット内容】
・解説ブック
・<書き込み式>遺言書準備ノート
・遺言書清書用紙(8枚)
・保管用台紙(1枚)
・保管用封筒(1枚)
Amazon(アマゾン)へ

 

弁護士、行政書士など専門の方に作成を相談する

遺言書は個人で作成できるものですが、やはり簡単に作れるものではないので専門家に作成を依頼するという方も結構います。

専門家の方に頼むメリットとして、やはり法的トラブルへの対応や、遺言内容の正確性が確保されているという事が大きいでしょう。

それでは、遺言書作成の専門家といえばどの業種の方でしょうか。
従来は遺言書の作成と言えば弁護士に依頼することが多かった模様ですが、現在は司法書士や行政書士も積極的に遺言書作成業務を行っております。
また、数は多くないですが、税理士が遺言書作成を行うこともあるようです。

この項目では、それぞれ遺言書作成の専門家の特徴や料金などを比較していきます。

特徴料金相場
弁護士・法律のプロなので、遺言内容の正確性が保証される
・一番依頼されている専門家なので安心感がある
・遺留分を侵害するなど、トラブルが生じやすい相続時には間違いなく弁護士がオススメ
・20万~300万円
相続する財産量によって大きく変動する
司法書士・登記のプロなので不動産が含まれる遺言に強い
・基本的に、弁護士に依頼するより費用が安い
・弁護士同様、法律の知識に長けている
・7万~20万円
料金体系は一律の所が多い
税理士・税法のプロなので、相続税なども詳しく相談できる
・遺言書作成をしている税理士は少ない
・10万~100万円
相続する財産量によって大きく変動する
行政書士・他の専門家と比べると費用が安い
・気軽に遺言書作成を行いたい時にオススメ
・5万~15万円
料金体系は一律の所が多い
信託銀行・定期預金などのついでに遺言書作成が可能
・銀行なので信頼性と永続性がある
・料金が高め
30万~200万円
プランによって料金が変動

最も多く利用されているのはやはり弁護士でしょうが、最近は司法書士や行政書士に頼む方も増えているようです。

無料相談なども行っている事務所も多くありますので、まずは一度相談してみて、一番信頼できると感じたところに依頼するのが良いかと思います。

 

遺言書を作る時期

9

これまで遺言書について、種類や作り方を説明してきました。
それでは実際に、遺言書はいつ頃から作れば良いのでしょうか。

結論から言うと、遺言書はいつ書いても構いません。
ただし、民法上では満15歳以上から効力が発生すると定められています。

遺言は意思表示ですので、遺言書を書くには自分の財産処分に対する判断が十分にできる状態が良いでしょう。
また、いきなり交通事故に巻き込まれてしまう可能性もあります。

そのため、遺言書作成は基本的に「早ければ早いほど良い」と言えます。

遺言書は、書いた後に気が変わったとしても、何度でも作り直すことが可能です。
そのため、早めに用意をしておいて損は何もありません。

 

エンディングノート、遺書との違い

一般的に、『遺言書』『遺書』という言葉は似たような意味合いで使われることも多いです。
また、最近では『エンディングノート』という言葉もあり、それら全てを混同されている方も多いですが、この三つは明確に違います。

この項目では簡単に『遺言書』『遺書』『エンディングノート』の違いを説明します。

目的書き方法的効力
遺言書・基本的に遺産相続のために作成決まった書き方があるあり
遺書・自身の死後、遺族にメッセージを残す為
・入りたいお墓の種類等、死後の自身に対する希望やお願いなど
自由に書いて良いなし
エンディングノート・自身の死後、遺族にメッセージを残す為
・入りたいお墓の種類など、死後の自身に対する希望やお願いなど
・意思疎通が困難になった時の医療法の希望など
・これまで生きてきた証を残すため
・残りの人生のあり方を考えるため
自由に書いて良いなし

このように、遺言書は民法で定められた法律行為で、決まった書き方などがあり、法的効力を持ちます。

エンディングノートや遺書には法的効力がなく、決められた書き方もないので自由に自分の気持ちを書くことができます。

遺書はご自身の死後に遺族に伝えたいメッセージや、ご自身に関する要望を中心に書きます。
エンディングノートは、遺書の内容に加えてご自身の残りの人生をより良くするために作成されたりします。

色々と違いはありますが、何より大きな違いとして『遺言書には法的な効力がある』『決められた書き方がある』という二点を覚えておきましょう。

また、遺言書はせっかく作成しても、その存在を遺族の方に見つけてもらえないと作成した意味がなくなってしまいます。
そのため、確実に遺言書を発見してもらうため、遺言書を残したことをエンディングノートに記載しておくと良いでしょう。

終活.comではエンディングノートについてもわかりやすく解説しています。

▼あわせて読みたいエンディングノートについて

まとめ

遺言書に関して、種類や書き方などについて紹介しました。

法律が絡む部分が多いので、どうしても難しく感じるとは思います。
最後に簡単にまとめると、

・遺言書には普通方式と特別方式があり、基本的には普通方式で遺言する
・普通方式の遺言には三種類あり、自筆証書遺言が一番多く利用される
・自筆証書遺言には決まった書き方があり、守らないと法的効力を失ってしまう
・遺言書は15歳以上から残すことができ、作成は早ければ早いほど良い

ご自身の死後、遺族のためにと残した遺産が理由で不要なトラブルが生まれてしまっては悲しいと思います。
トラブルを回避するためにも、遺産を残す方はしっかりと遺言書を作成しておくと良いでしょう。

また遺言書は法律が絡むので、自分一人で判断するのは難しいです。
当メディアでは、顧問弁護士や司法書士、行政書士の先生の無料相談も行っています。
遺言書でお悩みの方はご気軽に下記フォームよりご連絡下さい。
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